ハヤシの視点「経験の引き出し」
今回は「先入観にとらわれず経験の引き出しを活用することで自社の強みを活かす納期短縮技法」についてお話をしたいと思います。
今回はチャックではない箇所に部分的に着色したかんばん差し開発のお話しです。
これも、前回紹介した商社様からのご依頼です。その商社様のお客様よりチャックではなく、かんばんケースの側面(表面側)に着色を施すことで色分けをしたいというご要望がございました。他社が作ったサンプルもございました。透明なチャックの左側面に黄色い印刷色がついていました。これも前回同様頭を使う案件です。というのは、今回は前回の単価とは異なり、相当量のオーダーに対する納期がとても短い商品だからです。
作り方は簡単です。170㎜程度の長さに定尺でカットした原反(かんばんケースの1枚分の長さ)を予め用意し、色分けしたい定位置にシルク印刷を施し、それをチャックと溶着して製袋するとうい方法です。
ただし、このやり方では生産に時間が掛かり過ぎます。その理由は次の3つです。
①スリットされた巻取り原反ではなく毎葉原反となり、同時にチャック付けが自動機ではなく手付けになる。
②他社である印刷工場に持ち込む時間と、印刷工程に要する時間と、それを引き取る時間が発生する。
③足踏み機による仕上げ工程となり、前後スライド機を使用することができない。
因みにかんばんケースを作った後工程で印刷を施すというやり方ではチャックの凹凸面が塗工工程の邪魔をし、またインクのはみだしもケースの裏面に垂れ流れる可能性があってNGです。
私どもは得意の自動機を利用しなければ、求められる納期に対応することが困難であり、何としてもこれを使いたい。
そこでハヤシの視点です。印刷という社外工程をやめて自社内で着色できる方法を導き出し、社内着色加工をすればよい!
考え出したのは工程を着色工程まで含めて、全工程を3工程に分解してかんばんケース作りを流れ作業で行うという方式です。それは次の方法です。
①自動機を利用してチャック付け及びチャック付き原反の定尺カットを行う。(チャック付け)
②看板や表示板で利用される粘着剤の付いたカッティングシートは塩ビ製であり、これを用いて定位置に貼付することで着色する。(着色)
③カッティングシートはかんばんケースと同質の素材であり、共材としてウェルダー加工や焼切りができるため、この性質を利用して製袋を行う。(製袋仕上げ)
素材をよく知るハヤシは長年の観察によって知っていました、カッティングシートが塩ビであることを。経験による引き出しです。
このやり方で生産を行えば、工程間のタイムラグをなくし、同期化を組むことも不可能でなくなるため、圧倒的に高速の生産環境を構築することができます。しかも、自動機や前後スライド機といったハヤシの強みである合理生産機を駆使することもできます。従って、圧倒的に高速の生産が行え、お客さんのご要望される納期にもお答えすることができるのです。
カッティングシートを使うと、見た目も鮮やかな着色ができ、しかもテープ式なので印刷とは異なり、凹凸のあるチャック部まで色分けができるので、上から見ても色がわかるので、今までのものよりも良い!とお客様にもご好評いただき、大変息の長い消費となっております。「塩ビシートへの着色=シルク印刷」という先入観にとらわれず、カッティングシートが塩ビ製であることを知っていたからできた開発でした。
「先入観にとらわれず経験の引き出しを活用することで自社の強みを活かす納期短縮技法」というお話しでした。