ハヤシの視点「業務用商品②」

今回は「塩化ビニル特有の機能性と美観を表現した商品開発」についてお話をしたいと思います。

取引の深い商社様を通じて、あるスポーツ用品店のお客様より、展示商品の特徴やキャンペーンの内容に関するポップを内封するためのケースを開発して欲しいとのご依頼がございました。
要求された内容としては、
①まず一般消費者のお客様の目に触れるため存在感や清潔感、そして見栄えの良さが必要である。
②繰り返し使うので汚れにくい材質であって欲しい。
③加えて埃が入り込むのを防ぐため、カードを横(右側)から抜き差ししたい。しかもカードの抜き差しがスムーズに行えるように口ずらしをしたい。
④吊り下げるのでポケットに対して独立したヘッダー部分が必要である。
⑤陳列される商品の一つ一つに取り付けるものであり、たくさんの数量が必要となるため廉価で購入したい。

この案件に関する要求項のいくつかは塩化ビニルで作成するのにとてもふさわしい内容です。
①と②の要求項に対する答えがそれです。
塩化ビニルの特徴に素材としての存在感や高い透明度または豊かな色彩や多彩な表面エンボスというものがあります。
今回は、存在感と清潔感が求められるので透明の塩化ビニルがベスト!
また塩化ビニルは高周波ウェルダーで加工できるので、溶着した部分も美しく仕上がります。
ですから、①の要求項には最適な素材です。
そして、塩化ビニルの他の特徴として皺がつきにくいというものがあり、これにインクの移行性を防ぐことのできる機能の材料を使うことで②もクリアできるわけです。

問題は③④⑤の要求項です。横入れの構造のものは縦入れの構造のものより自動化が困難なのですが、今回のようにヘッダーが付いた構造で、口ずらしのある形状となると、機械の構造は複雑になり、安く作るどころか、何十万枚、何百万枚と作らない限り不採算に陥って、逆に高いものになってしまいます。

一方、手加工を安く行うこともできません。

当社は高周波ウェルダーを行う会社であり、その作業工賃は会社存続のための命綱であり、それに掛かる費用を徒に下げてしまうのは、4回前のこのメルマガで紹介した廃業を余儀なくされる加工業者と同じ道をたどることにつながりかねない危険な選択だからです。

それは絶対にすることができません。

そこでハヤシの視点です。ハヤシはこの問題を解決するために、製造の手順、金型の形状、使用する機械、を徹底的に考察し、
いつものように1回のウェルダーで複数個を同時に回収するための製法と金型を考案します。
今回採用する製造方法はトムソンによる材料処理と焼切りウェルダーによる毎葉分離で、これを前後スライド加工機で行います。

なぜ前後スライド加工機を使うかと言えば、作業者が横差しのポケットを正確な加工位置に置くのに、真上から俯瞰することができるため、
この場合足踏み機よりも作業効率が向上するからです。これにより4個を1回のウェルダーで迅速に作成することに成功しました。

ですから、例えば10,000枚のオーダーに対しても2,500回のウェルダーで終了し、機械も人員もいち早くその作業から解放することができ、次の仕事へ移行を容易にします。
製品の出来栄えは良好で、お客様もご納得され、途絶えることなく繰り返しオーダーを頂いております。

今回は塩化ビニルの特性を活かしたものづくりのお話でした。