ハヤシの視点「業務用商品①」
今回から2回は、一般消費者の目に触れ、手に取られることを予定するもののうち、消費者が直接購入するものではなく、店舗や施設によって貸し出されるなどして、不特定多数の消費者に繰り返し使用されることを前提とする商品を紹介します。
今回は素材や加工方法の変更を通し、強度や使用性が向上したお話です。
ある医療機関様より電話で、患者さんが病院内を持ち運ぶ簡易バッグについて、現状使っているものが壊れやすくしかも高額なので、より安価で丈夫なバッグが欲しいというご相談をいただきました。
伺ってご使用の製品を拝見すると、ご使用のものは、お客様のご要望する運用方法に対し、素材・加工方法ともに無理がある製品設計となっておりました。
その医療機関様では弱冠の立体感や重量感を有するタブレットと個人情報の記載がある用紙を一つのバッグに入れて、窓口から窓口へ患者さんに移動してもらう循環の仕組みを取っておられるのですが、そのバッグにPPの超音波加工品を使ってみえました。
写真はないのですが、病院名が入ったPPシートを展開図式にトムソンで打ち抜き、複雑に罫線や溶着箇所を設け、マチのある立体構造に仕上げた美観の良い商品でした。
一般の患者さんが病院から無償支給されて院内を持ち歩くための少しお洒落な感じのする小粋なケースです。
しかし、そのケースは病院に返却しなければならないもので、病院は丁寧に消毒や拭き取りを行ってリターナブルで使用する性質のものでした。
そういう使い方の中では、あまり有用ではないことは一目でわかりました。その理由は次の通りです。
①PP素材は繰り返し使ううちに傷や折れ線が入り、表面劣化が早い。
②超音波ウェルダー加工品は、強い衝撃や荷重によってウェルダー箇所が剥離することが多い。
③複雑な構造のものは単価も高くなるし壊れる可能性を有する箇所を増やす。
さて、ハヤシの視点が活かされやすい場面の到来です。いたずらをする要因を丁寧に潰す。それがハヤシの視点です。
まずは耐久性の強い素材を選ぶこと。次に信頼性の高い溶着技術を採用すること。
構造をできる限り単純化し、壊れる可能性を減らすこと。今回はとても簡単です。
その結果できたのが塩ビを高周波ウェルダー加工で仕上げた極めて単純な構造の製品です。
医療機関様からのご好評を得て、無事採用いただくことができました。
塩化ビニルには塩化ビニルの、高周波ウェルダーには高周波ウェルダーの長所があり、同じように、PPにはPPの、超音波ウェルダーには超音波ウェルダーの利点があります。
それらの利点は提供するサービスやパフォーマンス、それに、カバーすることのできる機能の範囲が決してオーバーラップしません。
もちろんハヤシでも超音波ウェルダーの加工はでき、お客様がご使用のものと同じ形のものをお届けすることはできるのですが、提供する場面がここではないのです。
今回は適材適所を正しくプロデュースする大切さのお話でした。