ハヤシの視点「形状が複雑な大型製品に対する工程のシンプル化」

今回は「形状が複雑な大型製品に対する工程のシンプル化」をテーマに、
商品開発におけるハヤシが大切にしていることについてお話をしたいと思います。

一般消費者の方々へお届けする美観を意識した製品製造のお話しの第二弾です。
前回のお守り袋は小さな製品に対し、美観を維持しながら生産とチェックの合理化を促した例を示しました。
今回は、もっと大きな製品である「おくすりカレンダー」を紹介します。

これは、ハヤシが実際に製造している商品です。
この製品は、写真では見にくいかもしれませんが、
①頭の薬タイトルポケットの下に、それぞれ前後二層構造で左端の曜日タイトルポケットと薬用ポケットが28か所配置されており(計75個のポケット)、
②全体がきれいに型抜きされ、
③さらに印刷されたヘッダー部分には厚紙が内封され、
④そのヘッダーには2ヶ所のアイレット(ハトメ)が打ち込まれ、
⑤そこに紐が通されて完成品となっております。

この製品ももともとは別の加工業者が受注していたものですが、製品値上げのタイミングで上げ幅が厳しく、
お客様では大変困るので、何とか当社にて請けて欲しいとのご依頼のもとに製法を考案した商品です。
さて、この製品の何といっても一番苦しい加工ポイントは、一目ご覧いただいてお分かりのとおり、
いかに確実にたくさんのポケットを付けるかという点です。
加工工数が多ければその工程数に応じて製品コストは上昇してしまいます。
加えて、塩ビは高周波ウェルダーを行うたびに塩ビを溶かすので、実は少しずつ伸びたり潰れたりして形状変化してゆきます。
その様子は微妙ですが不規則です。
また、このような多段構造の製品場合、上の段からあるいは下の段から順にウェルダーを施してゆく際にその形状変化をよく考慮してウェルダーの施し方を調節しないと、
チリも積もれば何とやら、微妙が微妙ではなくなり、歪な仕上がりになってしまうことがあります。これはとても面倒くさい。

そこでハヤシの視点です。ハヤシは一見すると複雑な製造過程をいかに単純化することができるかを絶えず考えております。
ハヤシは材料が不規則に変形するのを抑えるため、
また、この工程で膨大に掛かる作業時間を最小化するため、このポケット付けの工程を1回のウェルダーで行ってしまいます。
つまり、ポケット付けの工程が1工程なのです。その仕方は企業秘密なのでここでの公表は避けますが、
この開発によって、上昇する製品価格の抑制と安定した出来栄えの製品ができたと、お客様より大変およろこびいただきました。
もちろんこれを実現するためには、金型の工夫、ロスを出さない工夫、検査体制の工夫と様々な工夫を必要とします。
しかし金型や精密な治具を自社で作ることができたり、機械の台数を確保していたりといったハヤシの強みを活かして、
合理化生産と美観維持を達成することができました。