ハヤシの視点「使い方が個別化し複雑化するかんばんケース」
今回は「使い方が個別化し複雑化するかんばんケース」についてお話をしたいと思います。
時代が流れても容易に変化しないものがあります。優れた主義や思想や価値観などです。
例えば民主主義や国々によって異なる宗教観、人類全体を覆う倫理観などです。
これらは、現在から将来に向かって私たちが進む道の旗印となるため、容易に変化することはありません。
一方、時代の流れとともに社会の仕組みは刻一刻と変化してゆきます。
IT化の流れやAIの登場など社会の変化とともに、個人のライフスタイルやいろいろな組織のあり方も変化します。
そして個人や組織の変化とともに、ニーズも目まぐるしく変化してゆきます。
トヨタ生産方式であるかんばん方式もそうです。
「かんばん主義」という素晴らしい生産理論は今のところ不変ですが、長い年月の間にその運用の方法は変化してます。
例えば、二次元バーコードやQRコードの使用に始まり、現在ではICタグによる情報処理技術(RFID)も「かんばん」の中に活用されています。
以前のかんばん運用は、親会社が発行しケースに封入したかんばんが、親子会社間のあらゆる工程内を何度も何度も循環することにより、子会社は親会社の運用方法に倣って紋切り型に一貫的使用することで成立するというスタイルでした。
しかし世界全体の電子化が進んだことにより、「かんばん方式」もその流れに組み込まれました。
親会社はオーダーを紙とケースではなくオンラインデータで飛ばすため、現品確認の大切な機能を併せ持つかんばんを、親会社ではなく子会社がただ1枚の紙片として発行するようになり、共通の現品確認票として親会社もこれを受け取り、データ処理後に毎回廃棄されるのです。所謂e-かんばん(One way かんばん)です。これによって、親子会社間で使用されていたかんばんケースはほぼなくなりました。
しかし一方で、要求される部品の高技術化や生産合理化に伴って、あらゆる企業やあらゆる工場の工程内で使用されるかんばんは逆に非常に増えており、それらは依然ケースに封入して工程内を循環するので、私たちが製造販売する「かんばんケース」もこれの用に供するためのものが多く、形状も多様化しています。
つまり以前は、親会社さんが折角かんばんケースに入れたかんばんを振ってくれるので、下請けも自分たちの生産ラインの中でこれが共通に使えるようにと、情報処理の仕方が親会社の仕組みに標準化されていたのですが、振ってくれないのなら自分たちが使いやすいように、自分たちの好きな形、好きな寸法に個別化するという流れが生じているのです。ですから、とても複雑です。
もちろん、従来規格の標準かんばんケースは、在庫も豊富で価格も安価であるため、何の問題もなければ、これを使用し続けている現場様も夥しくたくさんあるわけで、「標準 → 標準」が大多数なのですが、この「標準 → 個別」の流れがかんばんケース生産のあり方に大きな変化をもたらしております。
その一部として寸法変更については、「標準ではない寸法(標準外寸法)のかんばんケース」を連続生産する過程において、ハヤシがこの取り組みに成功したことは以前お話しした通りです。
次回から複数回に分けて、新シリーズ「かんばんケースの現状」と題し、様々な視点で改善したかんばんケースのお話しをさせていただきたいと思います。
お客様との対話の中で改善を行った例のご紹介です。以前、両面硬質のかんばんケースを紹介しましたが、あれは非常に強い油を使われるお客様の現場で、短命で廃棄されてしまうかんばんケースの耐久性を向上させるための取組であり、好評を頂いた改善例でした。
それと同様に、お客様の特別なご用に供した結果、改善を達成したかんばんケースを紹介してまいります。