ハヤシの視点「フタル酸フリーの糊付きかんばん差し」
前々回に簡単にご紹介した、ヨーロッパにおける貿易規制(RoHS指令)と塩化ビニル業界が立たされている難しい舵取りの状況の流れを受け、
前回はフタル酸フリーのかんばんケースについてお話ししました。
数多くのご意見、お問い合わせをいただき、ありがとうございました。
今回は第2段として、フタル酸フリーの糊付きかんばん差しをご紹介します。
かんばん差しは通常、糊のついた基材(被着体に貼り付ける部分)と糊のついていない前材(カードを差し込むためのポケット状の部分)に分かれますが、
当社では基材の材料をフタル酸フリーにしています。
これは意図して行っているわけではなく、当社が糊引きをお願いしている糊引き加工メーカー様からのご要望によるものでした。
従来フタル酸の材料に対して糊引きをお願いしていた加工メーカー様よりある日相談が持ちかけられました。
それは、そのメーカー様では、今後ヨーロッパ向け製品の糊引きを行いたいため、
フタル酸の使用されている製品の糊引きが社内規定により一切行えなくなり、
ついては他の糊引きメーカーに加工を依頼するか、フタル酸フリーの材料に切り替えて加工依頼を持ち込むかというものでした。
時代の流れを痛感する一幕でした。
その加工メーカー様の技術が必要であると考えている当社では、それまで小刻みのロットで依頼していた糊引き加工に対し、
材料価格を従来のフタル酸材料の場合とほぼ同一価格にマッチングさせるため、相当の大型ロットによる材料確保を行い、
従来の加工メーカー様に加工を依頼することにしました。この材料ロットはそれまでの数倍に及ぶかなりのロットになります。
それでも、長年の試行錯誤の末に考案、・成功した軟質糊引き材料の利便性により、糊引きかんばん差しの需要を大幅に伸ばしていた当社は、この材料確保に踏み出しました。
しかし、転んでも痛くてもただでは起きない!ハヤシの視点はここから試され生まれます。
ハヤシは考えました。
フタル酸フリーの材料をフタル酸材料並の価格で購入できた以上、これによる基材は、前材をフタル酸材料かフタル酸フリー材料かを選択することによって、世界どこでも使ことができる!と。
もちろん、ヨーロッパ向けの製品に関しては前材もフタル酸フリーを使用して製品製造を行う必要がございますが、
EU連合以外の世界各地域のほとんどの国のユーザー様には、不当に高額化させることで高いかんばん差しを使う必要はございません。
つまり、基材は世界万国に通用する基準、前材はローカルな基準で対応し、お客様のご要望に応じ前材のスペックを変えることで、
全方位型に満遍なく対応できる製品づくりが行えるというわけです。
この試みはうまく時流に合致し、現在はあるユーザー様より、
「ヨーロッパを含む世界各地の複数の生産拠点において各国の輸入規制に抵触しない一元的なスペックのかんばん差し」というテーマで、とても大掛かりなお話を進行しております。
今後糊引きかんばん差しというジャンル関しても、
フタル酸フリーのかんばんケース同様、前材のスペックをフタル酸フリーで統一し、世界中の地域を選ばず、制約のない安心なかんばん差しを目指しております。
ハヤシだからできることを目指して、挑戦はまだまだ続きます。ご期待ください!