ハヤシの視点「シリーズ/かんばん差しの改善」

現代の自動車産業・自動車部品産業において、製品情報である「かんばん」を如何に効率よく確実に流通させるか、また、時代の変遷の中でその方法論が日進月歩変化し複雑化しているかについては、常々申し上げているとおりです。

前回までは主に工程内で使用されるかんばんケースの改善のお話しでした。今回から、「シリーズ/かんばん差しの改善」と題し、数々のかんばん差しに関するお困りごとの解決や、使用性の向上を実現したお話しを紹介してゆきたいと考えております。長いシリーズになると思われます。

かんばん差しと一口に言っても、様々な形状のものがあるかと思いますが、すべてのかんばんに関する最大の共通項は「製品や部品と一緒に移動する」という点です。これを丁寧に理解するところに、かんばんとかんばん差しの関係を読み解き、改善や提案を導くためのノウハウが隠されております。

 製品や部品が移動するためには、必ずと言ってよいほど、①コンテナ・パレット・台車などの入れ物と②製品や部品の規則的な内封量つまりユニットによって構成されなければなりません。そのユニット一つひとつに対するかんばんが決められた入れ物に添付され、その入れ物とユニット毎に工程間や工場間を移動し、次工程との連携を形成するのです。

かんばん差しは大きく分けて、入れ物に貼り付けられるタイプ(最も多い)のものと貼り付けるのではなく何らかの方法で取り付けられるタイプのものがございます。今回ご紹介するのは貼り付けられるタイプのもの、つまり糊付きのかんばん差しに対するもので、私自身が最も根本的で大きな改善であると自負する内容のものです。
 
 それは、軟質の基材に糊を引いたタイプのもです。かんばん差しは一般的に基材と前材によって構成されています。かんばんの表面である表示部分を保護し視認できるようにしているのが前材(ポケット)で、前材を溶着してプラダンやコンテナやパレットに貼り付けられる部分が基材です。この基材を現在でも一般的な硬質材から敢えて軟質材に切り替えて糊を引き、しかもそれを当社の製品標準としたことがとても大きな効果を表しました。

 なぜ、基材が硬質より軟質が良いかというと、硬質を用いた場合、貼られる入れ物もほぼ100%硬い素材のもの(鉃・アルミ・ステンレス・ポリプロピレンなど)であるため、硬いものと硬いものは反発しあい、搬送する際に揺れたり撓んだりすることで、剥がれが生じるからです。

 これに対し、軟らかい素材のものを基材に用いると、硬い素材の入れ物に対して柔軟に追従するので、剥がれが生じにくくなるわけです。

ある日、お客様の物流倉庫を歩いていた時に、プラダンの箱に貼られてバリバリに剥がれている他社品の硬質基材のかんばん差しを凄くたくさん見つけたときに、そのお客様より「こいつ、すぐに剥がれるし、剥がれたら割れるから、触ると痛いんだ」と言われて開発を思いつきました。
「硬い相手には軟らかいもの、普通の理屈だよね」ハヤシの視点です!
 軟質に糊を引くのは、糊引き加工そのものも糊を引いた材料の扱いも実は難易度が高く、当初はコントロールするのが大変でしたが、現在では独自の工夫や運用方法によって、問題なく生産をしております。お客様方にも大変好評をいただいております。